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謎の琵琶法師、蝉丸。 [うろうろ探訪]

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蝉丸神社・分社から、国道1号線沿いにたらたら下って来ると
上社(旧称:関大明神蝉丸宮)の参道、石段のところに着きます。
分社、上社、下社とも旧東海道に面していたようですが、今はこの
上社のみ国道1号線(東海道)に面しています。

上社の主祭神は猿田彦命、下社は豊玉姫命。合わせて関大明神として
関の守護、旅の安全を守る道祖神の役目だったのでしょう。
平安末期になり、上下両社それぞれに相殿神として蝉丸霊を合祀。

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さて、蝉丸さんですが・・・調べ出すとどうも実体がつかめず。(^_^ゞ
ミステリー小説を読むようで(こんなん大好き♪)

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百人一首のこの句は後撰和歌集のもので、この他にも

秋風になびく浅茅の末ごとにおく白露のあはれ世の中(新古今和歌集)
世の中はとてもかくても同じこと宮もわら屋もはてしなければ(同)
逢坂の関の嵐のはげしきにしひてぞゐたるよを過ぎむとて(続古今和歌集)

の3種を含め、4首の和歌を残しているから、蝉丸という名の歌人は
10世紀の半ばまでには実在した人物だといえるでようです。

プロフィールはと言えば、これが生没年不明。詳しいことはさっぱり
分かっていません。


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この神社も無人、人の気配がしませんでしたが
まだ松の内だったので、鳥居には注連縄など正月飾りをされていた。
それにしても鉄パイプの鳥居?
以前はもっと太い木の鳥居だったようですが・・・

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〈神楽殿・舞殿〉

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どうやら地域の方が守ってられるのかな。

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蝉丸のプロフィールのように扱われているのが、
能の演目、謡曲「蝉丸」。筋書きをかいつまべば・・・
延喜の帝の第四皇子として生まれた蝉丸、幼少の頃から盲目であった。
天皇は、蝉丸を逢坂山に捨てるよう命ずる。 捨てられた蝉丸は、
琵琶を抱き、杖を持ち、逢坂山の関に住む。
蝉丸の姉、第三皇女逆髪(さかがみ)は、髪が逆立つ奇病。
弟蝉丸を訪ね、やがて琵琶の音に導かれて再会を果たすことになる。
ふたりは障害をもった身を慰め合うが、悲しい別れの結末となる。
世阿弥の作ともいわれているが、ここに描かれている
醍醐天皇(延喜帝)の第四皇子・盲目・琵琶の演者というのが
キーワードになりそうです。

近松門左衛門作の人形浄瑠璃「蝉丸」では、蝉丸は女人の怨念で
盲目となるが、最後に開眼する・・・と、なっているようです。


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〈本殿〉

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関蝉丸神社の由緒書きには・・・
蝉丸に関する様々な伝承は『平家物語』などの文献に登場する。
和歌・管弦の名手であった鴨長明の『無名抄』にも当社に関する記述が
見られる。また、『今昔物語』巻第二四第二三話には管弦の名人で
あった源博雅が、逢坂の関に蝉丸という琵琶の名手が住むとの噂を聞き、
当時蝉丸だけが伝えていた「流泉」「啄木」という秘曲の伝授を
乞うため逢坂山に通い、三年の月日が流れた八月十五日、ようやく
秘曲を聞くことができたという逸話は有名である。
・・・と書かれています。

平家物語には「四宮河原になりぬれば、こゝは昔延喜第四の皇子蝉丸の
関の嵐に心を澄まし、琵琶をひき給ひしに・・・」
謡曲と同じく醍醐天皇の第四皇子、琵琶。四宮が新たなキーワードかな。

一方で、今昔物語では
「会坂ノ関に一人の盲 庵を造て住けり。名をば蝉丸とぞ云ける。
此れは敦実と申ける式部卿の宮の雑色にてなん有ける・・・」
この後、蟬丸は琵琶を弾くとも記されている。
逢坂の関、盲目、琵琶のキーワードは共通するのだが、
式部卿敦実(宇多天皇の御子)に仕える雑色(ぞうしき)だったと
されている。
※雑色とは当時の職位のひとつ蔵人(天皇の秘書的役割)の見習い。
昇殿も許されない身分、皇子とは随分違いがありますね・・・

尾崎雅嘉(江戸末期の国学者)の論では「蝉丸の姓氏詳らかならず。
古説に仁明天皇の時の道人なり。常に髪を剃らず世の人翁と号し、
或は仙人といひ、また延喜帝の第四の皇子などといへるは、いづれも
拠り所なき説共にて時代も違へり。また蝉丸の像を盲人の様に描く事、
笑ふに堪へたり。」と述べています。「百人一首一夕話」

ここまで言われると、盲人ですらなくなる。(^_^ゞ

蝉丸のことは、また次回にもう少し。ってことにして・・・
関蝉丸神社 上社をあとにします。

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〈本殿より神楽殿を見る〉
この上社、山の斜面にあるので、本殿と神楽殿、鳥居なども
平面にありません。それぞれ石段で繋がれた踊り場の様です。

下は国道1号線、昔の東海道。右に行けば逢坂の関、越えれば京都へ。
登坂車線が設けられていますね。

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ここにも常夜灯が立っていました。下の石台は車石が再利用されて
います。これもレプリカかな?
大津米屋中が建てた「逢坂常夜燈」、以前安土で見ましたが。


また余談ですが、百人一首には逢坂山を歌った和歌もありました。
「名にしおはば 逢坂山の さねかづら 人に知られで 来るよしもがな」
作者は三条右大臣(藤原定方)

子供にも教えられる意味は、その名(逢うという意味)を持っている
逢坂山に生えているサネカズラよ。サネカズラの蔓を手繰るように、
人に知られずに、来る方法はないものかなぁ・・・と、なりますかね。

も少しディープにこの句を楽しみましょう♪
「名にし負はば」=その名に背かなければ。
「逢坂山」は、逢う(密会の場所)の掛詞。
「さねかづら」は、マツブサ科サネカズラ属の常緑つる性樹木。
雌雄異株で、別名:美男葛(ビナンカズラ)。漢字表記は実葛・真葛、
核葛とも・・・。掛詞として「小寝」=一緒に寝る(大人の男女がね)
「人に知られで」は、人に知られずに。「よし」は、方法、手だて。
「もがな」はは願望の終助詞になります。さて、「来る」は?
「繰る」の掛詞なんです。素直に葛のイメージで、たぐり寄せるって
意味でも良いですが、ちち繰る=男女がひそかに会って情を通じる。
密通する。って意味も出てくる?
掛詞を駆使して色っぽい部分をオブラートに包み、品良く表現して
いますが、ムラムラした情熱も感じられますね。(^_^ゞ


これはサネカズラの実に似ていましたが、違うようですね。
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2016.1/6、関蝉丸神社(上社)にて。
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コメント 16

orange

しみじみと読み入ってしまいました^^
高校の古典の時間。好きでしたよ。
それでも奥深いところまでは察することできず...
この地にたって風景を眺めながら読めばしみじみとしたものを感じますねぇ。
by orange (2016-01-16 01:41) 

ちょいのり

『ご飯はね親がつくった宝物』
心にグッときましたよ。

by ちょいのり (2016-01-16 02:28) 

路渡カッパ

★orangeさん、ありがとうございます。
古典の時間、私も好きでした。よく眠れたから・・・
あの頃ちゃんと勉強してたらなぁ・・・(^_^ゞ
歳を重ねてからもう一度読み直してみるのも面白いものですね♪

★ちょいのりさん、ありがとうございます。
私も気に入って、(r[◎]<)パチリ
字もきれいですね〜♪

by 路渡カッパ (2016-01-16 11:44) 

なんだかなぁ〜!! 横 濱男

筆文字、達筆ですね。。
こんな綺麗な字が書けると嬉しいけど。。
1号線に下りる階段が、転げ落ちそうで怖いです。!!

by なんだかなぁ〜!! 横 濱男 (2016-01-16 14:35) 

ヒロシ

ほんとうに何度も読み返しました
知らない知識、でもすぐに忘れるんだろうなと・・・
by ヒロシ (2016-01-16 17:05) 

路渡カッパ

★横 濱男さん、ありがとうございます。
町内に一人や二人、達筆の方が居ますね♪
結構交通量が多いので転げ落ちたら大変、確かに危なく見えますね。(>_<)

★ヒロシさん、ありがとうございます。
私もすぐ忘れます。全然身に付かない・・・
質問されたら、ブログを読んでねと言おうかな。(^_^ゞ

by 路渡カッパ (2016-01-16 19:36) 

たいちさん

蝉丸にこだわり、追求されましたね。歴史が好きですので、ブログ記事を楽しく熟読しました。私も神社記事を、よく書きますが、うわべだけだと反省しています。
by たいちさん (2016-01-16 20:33) 

はなだ雲

しるもしらぬも逢坂の関
百人一首のなかでは覚えやすく忘れにくい句でした^^
蝉丸神社、こんなに立派なのに無人なんですネ
行ってみたいなぁ

by はなだ雲 (2016-01-17 08:11) 

京男

おはようございます。
説話面白いですね。
中高生の時は、あまり面白くなかったけど、いまぐらいの年代になると面白い。それだけちょっと経験してきたのかな。
京都だってそうですね。
by 京男 (2016-01-17 09:32) 

路渡カッパ

★たいちさん、ありがとうございます。
授業の日本史はそれほど好きじゃなかったのですが、実際に触れる歴史は面白いですね♪
>うわべだけ・・・そんなことないですよ、詳細な社寺の記述はとても興味深いです。(*^^)v

★はなだ雲さん、ありがとうございます。
蝉丸さん、百人一首でも特異な存在でしたね。
しるもしらぬも・・・この句は百人一首の中で唯一、濁点・半濁点が使われていない句なんです。僧なのに帽子を被っているのも蝉丸だけだし。(^_^ゞ

★京男さん、こんにちは。
学校で教えられる古文や日本史って眠くなりますよね・・・(^_^ゞ
歳を重ねると見方も聞き方も変わりますね♪

by 路渡カッパ (2016-01-17 11:50) 

馬爺

おはようございます。
昔は古典はさっぱり興味がありませんでしたが最近はお寺巡りをするようになってからは興味も沸いてきましたね、やはり年を取ってみると古いものに興味示すんですかね。
by 馬爺 (2016-01-18 08:15) 

路渡カッパ

★馬爺さん、おはようございます。
私もそのクチですが・・・(^_^ゞ
歳を重ねるとどうしても新しいものより過去のものに目が向いてしまいますね。
そういうことも必要なんだと思います。
by 路渡カッパ (2016-01-18 09:45) 

sig

三条右大臣の句の解説、すばらしいですね。昔は百人一首は坊主めくりなどの遊戯もしながら子供のころに覚えたものですが、この句には「人に知られで来る」あたりに子供ながらも密やかさを感じたものでした。完璧でおみごとな解説に、ふと昔の家族団らんの正月風景を思い起させていただきました。
by sig (2016-01-19 19:38) 

路渡カッパ

★sigさん、ありがとうございます。
百人一首は父親が好きで、正月にはよくやりました。
名にしおはば・・・この句は詠むのも取るのも苦手でした。(^_^ゞ
意味も分からず憶えたものですが、懐かしく思い出されます。
by 路渡カッパ (2016-01-19 21:24) 

風来鶏

「さね」とは陰核(クリ◯リス)の意味もありますので、まあそう言うことですね(^^;;
by 風来鶏 (2016-01-20 16:52) 

路渡カッパ

★風来鶏さん、ありがとうございます。
あぁぁ、それ言っちゃう?
控えていたのに・・・(^_^ゞ
by 路渡カッパ (2016-01-20 22:54) 

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